相続の放棄とは被相続人(亡くなった人)の権利(プラスの財産)と義務(マイナスの財産)を全て引き継がないことです。
相続人が、相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所へ必要書類を準備して申述する必要があります。
司法統計によると相続の放棄は、平成24年は約17万件でしたが、年々増加し、令和4年は過去最高の26万件を超える件数となっています。
今回は実際に相続の放棄をした場合の主な留意点を確認します。
- 遺産分割協議に参加する義務がなくなる
遺産分割協議は相続人全員の合意で成立するため、相続人は相続財産を引き継ぐ意思がない場合でも、遺産分割協議には参加しなければなりません。
しかし、相続の放棄をすることにより、相続人ではなくなるので、遺産分割協議には参加できなくなります。
プラスの財産もマイナスの財産も引き継ぐことはありません。
- 相続権が次の順位へ移る
相続権のある順位の人が全ての相続の放棄をすると次の順位へ相続権が移ります。
例えば亡くなったAさんの相続人は第2順位の母のみとします。
母が相続の放棄をすると第3順位のAさんの兄弟姉妹へ相続権が移ることになります。
この場合は将来的な財産の相続を一つ飛ばすことができます。
ただし、実行する場合は税理士や司法書士へ事前に相談をしてください。
- 代襲相続はない
相続権の第1順位は子となります。
親より先に子が亡くなっている場合、その子の子(孫)がいれば孫が代襲相続人となります。
しかし、相続の放棄を行っている場合には、代襲相続が起こりません。
親の相続が発生して、子が相続の放棄をしても、子の相続権が孫へ移るわけではないので、注意が必要です。
- 単純承認とみなされる(相続の放棄が認められない)行為
相続を開始した後に単純承認をしたとみなされる場合があり、この場合は相続の放棄が認められなくなります。
詳しい判断は個々の事情で異なりますが、相続人にしかできない行為をすると単純承認をしたと認められます。
例えば被相続人(亡くなった人)の預金の解約をしたり、使ったりする行為などです。
次回は相続の放棄をした場合の「相続税の留意点」をお伝えします。