前回は「相続時精算課税」のしくみについて説明しましたが、今回は相続時精算課税を使う場合のポイントをお伝えします。
もらった人は贈与税の期限内申告が必須条件です。
初めて相続時精算課税を使う場合は申告書と合わせて、届出書を税務署に提出しなければいけません。
一日でも過ぎると特別控除が使えなくなりますので、将来、贈与税の負担が大きくなってしまう場合もあります。
一度選ぶとずっと続く制度です。
この制度は、あげる人ごとに選ぶことができます。
例えば父からは相続時精算課税を使うが、母からは暦年課税とすることもできます。
ただし、一度父からの贈与で相続時精算課税を使うと、その父からの贈与については、暦年課税に戻ることはできません。
そのため、使うタイミングがとても重要になります。
相続税の計算をするときの財産の評価は、贈与した時点で固定されます。
例えば2,000万円の評価額である建物を贈与した場合、将来相続税を課税される場合は贈与から年数が経っていても同じ2,000万円となります。
将来的に価値があがりそうな土地や自社株式を贈与する場合は、贈与した時点で評価が固定されますので、相続時点での評価が2,500万円に上がっていたとしても、贈与時点の評価額2,000万円が相続税の課税対象となります。
そのため今後、評価が上がると見込める財産については、有利になります。
相続税の特例である「小規模宅地等の特例」が使えなくなります。
小規模宅地等の特例は土地の評価額から50%~80%の減額を受けることができる相続税の特例です。
(ただし、面積制限があります)
相続税の特例ですので、贈与でもらっていると減額の特例は受けられません。
贈与及び相続でそれぞれの税金を計算し、比較をしないと税負担が大きくなることがありますので、注意が必要です。
地代収入や家賃が発生する不動産を贈与したい、という事もあると思います。
この場合、財産を移転することで、所得も移転することになります。
ただし不動産を移転する場合は贈与税や相続税以外に、他の税金が発生します。
土地または建物を贈与する場合は登記が必要になります。贈与の登記する際には評価額に2%の登録免許税が発生します。相続登記の際にも登録免許税が発生しますが、0.4%となっており、贈与登記より低くなっています。
また贈与の登記後に不動産取得税がかかります。相続の場合は不動産取得税がかかりません。
相続税と贈与税以外の登録免許税と不動産取得税についても事前に把握しておくと良いでしょう。
相続時精算課税は名前の通り、贈与税と相続税の二つの税金を相続があった時に精算する制度です。
使う場合は将来どうなるかを一緒に検討しましょう。