相続税には「配偶者の税額軽減」という特例があります。聞いたことがある人もいらっしゃるかと思います。
どのような特例か具体的に見てみましょう。
【 事 例 】
被相続人(亡くなった人):夫
相続人:妻、長女、長男の3名
相続財産:1億円(母7千万円、長女2千万円、長男1千万円ずつ相続する)
💡まずは課税遺産総額を求めます。
基礎控除は3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円となります。
相続財産から基礎控除を差し引きます。
1億円-4,800万円=5,200万円が課税遺産の総額となります。
💡次に課税遺産総額を法定相続分であん分します。(実際の相続した割合と異なります。)
妻 5,200万円×1/2=2,600万円
長女 5,200万円×1/4=1,300万円
長男 5,200万円×1/4=1,300万円
💡それぞれに税率を乗じて、それを合計します。
妻 2,600万円×15%-50万円=340万円
長女 1,300万円×15%-50万円=145万円
長男 1,300万円×15%-50万円=145万円
合計 340万円+145万円+145万円=630万円(相続税の総額)
ここまでは、誰がどのように相続したか、については影響がありません。
これから具体的にそれぞれが負担する相続税が計算されます。
💡相続税の総額を実際に相続する割合であん分します。
妻 340万円(相続税の総額)×7千万円(妻の相続分)/1億円(相続財産)=238万円
この238万円が妻に割り振られた相続税となります。
ここで、妻の相続分7千万が法定相続分または1億6,000万円より小さい部分は、
配偶者の税額軽減を受けることができます。
今回の事例では、妻の相続分が1億6,000万円以下となります。
ので、238万円全額が控除されるため、妻が相続税を納める必要はありません。
長女と長男の相続税額はそれぞれ次のようになります。
長女 340万円×2千万円(長女の相続分)/1億円=68万円
長男 340万円×1千万円(長男の相続分)/1億円=34万円
このように配偶者の税額軽減は納税額に大きな影響があります。
しかし妻に相続が発生したときの相続税には、注意が必要です。
妻の財産が大きくなると、相続税の負担も大きくなります。
将来の相続税を見越して、配偶者の特例を検討することをお勧めします。
また妻へ相続させる財産についても、将来は誰に相続させるかを話し合っておくと、トラブル回避の第一歩となります。